弔  辞






元全国戦友会連合会の名会長であられた西田(すすむ)氏が他界され、2月27日に告別式が催されました。
その際捧げられた西田会長への佐藤副会長からの弔辞を採録いたしました。






 元・全国戦友会連合会・全ビルマ戦友団体連絡協議会・ビルマ英霊顕彰会の会員一同に代り、謹んで西田将会長のご霊前に、お別れの辞を申し上げます。

 西田会長、今ここに凛々しさの中にも温情溢れる会長の御遺影を拝するとき、靖国の英霊の慰霊顕彰に一生を捧げられた会長の在りし日のご精進のお姿が偲ばれ、只々感無量哀悼の言葉も声にはなりません。長い間、本当にご苦労様でした。又私どもに対する適時適切なご薫陶の程誠に有り難うございました。衷心より御霊前に御礼申し上げます。

 会長の病篤しとのお知らせを受けて、私はその一日も早いご回復を祈りつつ、会長が心血を注いで編集に当たられた会報、「戦友連」の三十四年間にわたる一号から四百七号に及ぶ記事を通覧しその一ページ一ページに亡き戦友を思慕敬仰する会長の至誠が滲み込んでいるのを読取り深い感動の波に洗われました。そして会長が常々お話された「靖国神社は平和のシンボルだ。」「それをお守りするのが戦友愛で結ばれた戦友会の最大の務めだ。」とのお言葉に思いを馳せると共に、遺骨収集や現地慰霊碑建設のためにビルマ英霊顕彰会や全ビルマ戦友団体連絡協議会等の組織を立ち上げ日印両政府に働きかけ所期の目的を果たされた偉業に今更ながら感嘆した次第であります。

 会長は五十五期生として昭和十六年七月陸軍士官学校を卒業するや十三師団歩兵五八連隊に配属となり中支那の第一線宜昌方面に馳せ参じ、次いで同十八年の編成改変に伴い新設の烈三十一師団に組み入れられ南方は印緬地区に転進、インパール作戦やイラワジ会戦に数時の負傷にもめげず中隊長・大隊長として常に第一線で率先陣頭に立って勇戦敢闘数々の武勲を立てられました。会長は緻密な状勢判断と沈着・勇猛果敢の資性とを合わせ持ち且つ部下思いの典型的な武人で上下の信望を一身に集めておられました。しかしサンジャックやコヒマの激戦は、質実剛健・忠烈無比な多くの越後健児の尊い血潮で彼の地の山谷を染めざるを得なかったことも悲惨な現実であり、このことが会長の心の痛手となり、靖国の英霊の慰霊顕彰に一生を捧げる原点となったことは拝察するに余りあります。

 戦後の混乱も収まり漸く人心の落ち着きかけるや会長主導の下歩五八会戦友会が結成されたことは真に宜なるかなであります。さて、時の流れは人を待たず、輝く武勲と伝統とを誇りに類稀な団結心で結ばれた歩兵五十八連隊の戦友会にも解散の日がやって参りました。その解散慰霊式典に参列させて頂いた私は、その運営の見事さに「五八精神」の真髄に触れ、改めて会長の統率の偉容に感服しました。特に病を得て不参列を余儀なくされた五八会の名誉会長として託されたメッセージの一節に「西田なくして五八なし、五八なくして西田なし」の名言がありました。そこには、戦陣に倒れた亡き戦友を偲び、その慰霊顕彰一筋に纏め育て上げ、四十数年に亘り実践してきた戦友会のリーダーとしての揺るぎない信念と自負とが漲っているではありませんか。全国に戦友会数多しと言えども、果たしてこれだけ断言できる指導者は他に見当たるでありましょうか。「戦友連」が有終の美を全うし得たのも西田会長の人徳によることは万人の等しく認める所であります。

 更に戦友連の解散に当たりましては、組織的運動は終わるが、国家祭祀の悲願達成まで有志戦友による運動の継続、若い後継者への語り継ぎ、そしてインターネットの活用等細部に亘りご教示を賜りました。仰せに従い私どもは、上部団体「英霊にこたえる会」の主宰下、漸増する若い憂国の同志共々老骨に鞭打ち、広報活動に精進しております。本年は大東亜戦争終結後六十周年の記念すべき年に当たります。北朝鮮の拉致問題、中国の領海侵犯、イラクへの自衛隊派遣、小泉政権の支持率下落などわが国を取り巻く内外の環境は真に厳しく、靖国問題解決はここ一、二年が最後の正念場であります。この大事な時に会長と幽明境を異にすることになりましたのは、痛切の極みではありますが、会長のお気持ちは深く私どもの心の中に刻み込まれております。

 私にはこの度会長が天に召されたのは、祖国の行く末を憂える英霊がお呼びになられたのだと思えてなりません。この八月十五日には何としてでも小泉首相の靖国神社参拝の公約を実現させ、靖国問題解決の突破口たらしむべく、活動することをご霊前にお誓い申しあげます。何卒、天上から私共を叱咤激励して下さい。何時か会長の申された通り国家祭祀の実現にはかなりの年月を必要とするかも知れません。しかし近い内、その道への端緒を開拓しお側に参上し報告できますよう念願しております。

 どうぞ安らかにお眠りください。会長暫しのお別れの言葉と致します。又彼岸でお会いする日まで。さようなら。


   平成十七年 二月七日  
      元全国戦友会連合会  副会長   佐藤博志













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