世界情勢の変遷と暗黒政治の終幕に伴い、台湾同胞も漸く目覚めてきた。特に解厳後、就中二・二八事件の様相が明らかになってからは、真相の発掘と追及に懸命である。心あるものは「何故当事者達は、終始口を噤んでいたのか」と怒る。しかし之は命令でやむを得ない。臭い物には蓋という譬も有り、実を吐けば命が危ないからである。
更に一転、最近同胞が頻りに追求しているのは、
そして大東亜戦争の真相を真剣に探求する者が増えてきたことは喜ばしい限りである。
解厳後、言論と思想制限が未だ厳しかった時分、「大東亜戦争は侵略戦ではない、自衛戦である」と談じたところ「馬鹿野郎」と怒鳴られた事があった。時機が早すぎたせいで、幸い最近に至り彼らも感ずるところがあって、あの聖戦に関する考え方が変りつつあるのは台湾社会の進歩の現象に外ならず、世相の変転と相俟って「台湾海峡を断じて守れ」の雄叫を耳にするにつけ、益々歓声をあげざるを得ないのである。
これを機会に不備多多乍ら関係文献を根拠に開戦前後と其の経過の要点を列挙し、且つ愚見をおり込み、一編の文章を綴り上げた。完全な資料とは言えないが、これに依って果たして大東亜戦争はどっちが仕掛けたのか、侵略戦争であったのか、或いは自衛戦争だったのか、それを分析し判断資料として御参考に供し、若し御賛同して頂ければ幸甚の至りである。誤解と疑問は須らく解消しなくてはならない。
しかし台湾同胞よりも日本同胞に一人でも多く読んでいただきたい。何故ならば、日本同胞の中には戦後の誤った教育を受けて、歴史の流れや、歴史上の真実を知らず、自分の祖国日本を嫌悪する者が多い。これでは将来が思いやられる。これらの人々に正しい歴史観と自信を取り戻して貰い、世界に冠たる日本精神―――大和魂の振作復興を図るのは私個人の望みとする所ばかりではなく、日本に於ける刻下の急務で有る外、指導者並びに教育者の使命とすべきではなかろうか。
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