私・・・戦後、東京裁判のインドの代表判事であったパール
博士も、もしハル・ノートと同じような通牒を受けとっ
たなら、たとえモナコやルクセンブルクのような小国
といえども、
ここまで追いつめられれば、日本民族に誇りがある
限り、勝算がなくても立ち上がるほかなかっただろう
ね。
私・・・そうだよ。正に自衛戦争だったわけさ。侵略と いうことばを字引きで引くと、「正当な理由なくして 他国に侵入し、領土、財物を奪いとること」と書いて ある。この戦争が侵略戦争でなかったことは明かだろ う。
私・・・そうだよ。昭和天皇も開戦の時の詔書で、不幸 にして米英と戦端を開くことになったが、これはまこ とに已むを得ないことで、決して私の本意ではないと いうことをおっしゃって居られる。何とかして戦争を 避けたいと願って居られたのだ。
私・・・いや、それも違うんだよ。日本としては真珠湾
攻撃の前に宣戦布告がルーズヴェルト大統領の手許に
届くように、アメリカの日本大使館に通報していた。
それが偶々日本大使館側の翻訳の遅れで、ルーズヴェ
ルトの手に届いた時には既に攻撃が始まっていたとい
うわけだ。
私・・・そう言えないこともない。しかし本当はルーズ ヴェルト大統領は、宣戦布告の書類が届く前に、この 日に真珠湾が攻撃されることは知っていたようだよ。
私・・・暗号というのを知っているだろう。敵に知られ ないように味方同志で連絡をとるには、どこの国でも 暗号を使う。ところが日本の暗号は、ほとんどアメリ カに解読されていたようだ。
私・・・そこがおじいさんにもよく分らない所なんだよ。 しかしあの頃イギリスはドイツに攻められて、何とか してアメリカを戦争に引き込みたかった。しかしアメ リカは一国主義で、なるべくならヨーロッパを助ける ための戦争をしたくなかった。それにアメリカ人自身、 危険が身に迫って来ない限り、戦争などしたくない。 アメリカ国民をその気にさせるためには、どうしても 日本に先に手を出させるほかはない。それがルーズヴェ ルトの気持だったと思うよ。
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