ロシアの東亜進出野望を
粉砕した日露戦争





私・・・そうだよ。ロシアは日本の隣国だけど、厄介な 隣国さ。地図を見ても分かるように、ロシアは広い土 地を持っているけれど、北の海は冬は凍って使えない し、何とか南の海に一年中使える港を確保したいと願っ ていた。そればかりでなく、ロシアという国は、昔か ら隙さえあれば領土を拡張しようという野心を持って いた。

だから日露戦争の前には、ロシアは既に満州を占領 していたし、旅順、大連などもロシアの占領下にあっ た。のみならず朝鮮半島にも勢力を伸ばし、日清戦争 で折角清国(今の中国)との絆を断って独立したかと 思われた朝鮮の李王朝の中にも入り込んで、朝鮮と日 本との離隔を策し、あわよくば朝鮮半島もロシアの占 領下に置こうとした。

朝鮮半島までロシアが南下したらどうなると思う? 日本はロシアと何回にもわたって交渉を続けたけれ ども、誠意ある返事が得られず、明治三十七年(一九 〇四年)二月十日遂にロシアに宣戦布告し、戦争が始 まったわけさ。これが日露戦争だね。日露戦争まで日 本の侵略戦争だなどと言う者がいるが、馬鹿もいい加 減にしろと言いたい所さ。



孫・・・ロシアは大国、日本は小国なのに、よく勝てま したね。


私・・・そうだよ。よく勝てたと思うよ。ロシアの西隣 りにフィンランドという国があるだろう? ロシアに 散々ひどい目にあった国さ。ロシアのバルチック艦隊 が日本の海軍をやっつけようとバルチック海を出て行っ たのを見て、フィンランドの人達は、「可哀そうに、 日本もこれでやられてしまう」と同情したそうだ。と ころが案に相違して、東郷平八郎司令長官率いる日本 の連合艦隊が、ロシアのバルチック艦隊をやっつけた だろう。陸でも乃木希典大将率いる陸軍が旅順を陥落 させ、奉天(今の中国の瀋陽だ)も占領して、とうと う小国日本は大国ロシアに勝ってしまった。フィンラ ンドは喜んだね―。今でもフィンランドには東郷元帥 の顔のついた東郷ビールというのが売られていて、日 本にも輸出されているんだよ。

フィンランドもそうだが、本当は一番喜んだのはア ジアの国々さ。とりわけ印度だろうね。アジアは長い 間、欧米の植民地になっていて、アジア人は欧米には 勝てないものと諦めていた。それを日本が勝ったもの だから、われわれだって独立できるという自信が湧い たのさ。



孫・・・日露戦争でロシアが負けて、ロシアは大人しく 引っ込んだんですか。


私・・・引っ込むものか。なる程ポーツマス条約とか色々 な条約が結ばれ、日本も樺太の南半分とか、遼東半島 (旅順、大連のある所)とかを統治することになった。 しかしロシアがソビエトに変わっても領土拡張の野望 は変わらず、それがやがて満州事変につながって行く のさ。



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