占領中の改憲押しつけは
国際法違反





私・・・許されるもんか。国際法というのがあるだろう。 国際法によると、占領軍は占領地の法律をすべて尊重 する義務を負わされている。当時は明治憲法が生きて いたのだから、それを廃止して、自分に都合のよい憲 法を押しつけるなどということは、重大な国際法の侵 犯さ。



孫・・・そう言えば、この間大学でフランス憲法のこと を少し習ったんだけれど、八十九条四項だかに、「領 土保全が侵害されている場合には、いかなる憲法改正 手続きも開始または継続されてはならない」とあった な。日本が平和条約を結んだのは、昭和二十七年四月 二十八日だから、それまでは領土保全が侵害されてい たわけですね。


私・・・そうだよ。そういう占領下に於て、占領軍に押 しつけられた憲法が、まともな憲法である筈がないよ ね。



孫・・・そういう国際法違反を、アメリカはよくも図々 しくやりましたね。


私・・・アメリカもそれを知っていたのだろう。だから 出来るだけ日本人が自発的にやったような形をとった のさ。アメリカ人が作ったということがバレると大変 なことになるので、アメリカ人に対しても、日本人に 対しても、固く緘口令を布いたようだね。そして日本 人が自らの発意で作ったということを盛んに宣伝した。



孫・・・日本人は全く作ろうとしなかったんですか。


私・・・いや、初めは作れと言われて、作ることは作っ たようだね。しかし、それを提出したら、こんなのじゃ 駄目だと言われて、すぐに却下されたのさ。



孫・・・それで結局、アメリカ製の憲法が、ほとんど無 修正で今の憲法になったわけですね。


私・・・うん、確かに審議は行われたよ。記録では、昭 和二十一年六月二十日から十月七日まで、帝国議会で 改正案の審議が行われたことになっている。しかし前 にも言ったように、語句や言い廻しの修正は認められ たけれど、根幹に触れるような訂正は一切認められな かった。

結局、負けたのだから何を言っても仕方がないと言 うことで、衆議院も貴族院(今の参議院)も原案通り 通過したわけさ。



前ページ 表紙目次 次ページ