読売憲法改正試案の意味





孫・・・昨年の十一月三日に、読売新聞が憲法改正試案 というのを発表しましたね。あれなんか、どうなんで すか。


私・・・そうだね。憲法改正に皆が二の足を踏んでいる 時に、日本一の大部数を誇る読売が改正試案を出した ということは、憲法改正の起爆剤としては意味がある だろうね。しかし読んでみると、アメリカ製憲法の焼 き直しのようなもので、かえって悪くなるようなもの だよ。



孫・・・どんな点が悪くなるのですか。


私・・・今の憲法には、前文に「主権が国民に存するこ とを宣言し」とあるし、第一章第一条にも「主権の存 する日本国民」とある。要するに、主権が国民に在る ということを言っているわけだ。

しかし、それにもかかわらず、第一章は「天皇」と しているし、その第一条の冒頭には「天皇は日本国の 象徴であり、日本国民統合の象徴で」と唱っている。

読売の言い分によると、主権が国民に在って、天皇 は象徴に過ぎないのだから、当然第一章を「国民主権」 とし、「天皇」は第二章に持って行くべきだとして、 そのように改めている。

如何にも尤もらしい言い分だけれど、そこが問題な のだよ。



孫・・・どういう風に問題なのですか。


私・・・アメリカが何故「国民主権」ということを強調 したか、分るかな。

アメリカは本当は天皇を退位させて、日本を大統領 制にしたかったのさ。しかし終戦直後、昭和天皇がマッ カーサーを訪ねられて、「私の一身はどうなろうとも、 国民が生活に困らないよう援助をお願いしたい」と言 われたことにマッカーサーが感激したこと、そして敗 戦にもかかわらず、国民が天皇を慕っている姿が占領 軍の目にも明らかだったことから、天皇を退位させた ら日本は大変なことになる、占領政策も失敗する――― と判断して、天皇を象徴として残したのさ。しかし本 音は、天皇のイメージを出来るだけ薄めて、主権は国 民なんだということを強調したかったんだろうね。何 故って、アメリカは、日本軍が強かったのは天皇の下 に国民が一致団結して戦ったからで、そこを切り崩さ なければならないと思ったのだよ。読売案は正にそう いうアメリカの思惑に乗ったようなもので、国民主権 を強調し、天皇の立場を一段と低い所に置いているわ けだ。

アメリカの日本弱体化政策のお先棒をかついだ憲法 改悪案と言ってもよいのではないかな。



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