紙一重の差 ―ビルマからの生還―





孫2・・それでおじいさんはビルマへ行ったんですね。 ビルマでは随分沢山の人が死んだということだけど、 よくおじいさんは生きて帰れましたね。

私・・・生きて帰るも、死んで帰るも、本当に紙一重の 差さ。おじいさんの居た部隊なんか、部隊長も戦死し たし、一番上の階級の軍医さんも戦死してしまった。 おじいさんも軍医だったけれど、いつでも明日は死ぬ かなと覚悟していた。


孫2・・死ぬこと怖くなかったですか。

私・・・怖くなかったと言えば嘘になるね。おじいさん はまだ二十才代だったし、戦争が終って日本へ帰れれ ば、医者としてやりたいことは山程あったしね。でも 戦争が激しくなって、とても日本へ帰れるような状態 ではなかった。何れは死ぬと思っていたよ。何故って 毎日々々誰かしら死んで行くんだからね。それでも生 きている限り頑張らねばならなかった。何とかここで 頑張ることが、日本の国を守り、日本に居る自分達の 家族を守ることになると信じたからだ。

命のある限り戦い、 死んだら靖国神社に(しず)まって国を守るというのが、おじいさん達の気持だった。


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