靖國神社遊就館新装開館
(本館改修:新館新築)









七月十三日、靖國神社御創立百三十年記念事業の一環として行われてきた遊就館本館改修及び新館新築が竣工し、開館の運びとなった。

遊就館は靖國神社の境内に建つ近代戦史博物館で遺品や兵器等三万四千百三十点の所蔵品の中から、約三千点が展示されている。

展示室は、大きく分けて、近代史の真実を学ぶ「戦史回廊」と、英霊の御心に学ぶ「英霊顕彰」展示室があり、他に英霊の不朽の栄誉を伝える「特別陳列室」、人間魚雷「回天」や九七式中型戦車などの大型兵器を陳列する「大展示室」等がある。そして、新館玄関大広間には零式艦上戦闘機五二型や、泰緬鉄道開通式で走った蒸気機関車等が展示されている。

ここに、まさにわが国最高の戦争博物館が誕生した。

「みたままつり」初日の七月十三日、オープンしたばかりの新遊就館にさっそく足を運んだ。新館が出来て広くなったのだろう、ぐらいに思っていたら、いい意味で予想を裏切られた。中身が一変している。

まず展示のデザイン的な斬新さに目を見張らされた。遺品類が雑然と並べられているのではなく、空間をかなりぜいたくに使って見やすく、解りやすく、視覚的に訴えるような工夫が至るところになされている。

旧遊就館との最も大きな違いは、説明パネルの充実だろう。各展示室は一部屋が二つのスペースに別れていて、一方はこれまで通り遺書・遺品類が展示されているのだが、もう一方でその方々がどういう状況で戦われたのか、当時の世界の動き日本の置かれた立場、作戦の経過等がカラフルな地図や表をふんだんに使って、ていねいに説明されているのだ。

これなら、歴史をあまり知らない若者がふらっと入っても、その場で勉強することができる。しかも、それが日清・日露戦争から大東亜戦争に至るまで続いているのだから、遊就館をぐるっと一まわりすれば、それだけでわが国の近現代史が一通り頭に入ってしまうというわけだ。

そのかわり、根を詰めて見ていくと、そう簡単には見終わらないので、覚悟しておいた方がいい。ところどころに休憩用の椅子が置いてあるので休み休みじっくり見ていくのがいいだろう。また、一回で済まそうとせずに、二度三度と訪れるべきだとも思う。

とにかく、戦争を知らない世代にも存分に味わえるつくりになっているので、学校の課外研修や修学旅行のコースにも、ぜひおすすめしたい。

さて、新遊就館を拝観して最も印象に残ったのが、「招魂齊庭」のコーナーだ。

ここには「御羽車」が展示され、招魂式の様子が模型や図で示されている。祖国のために戦い、傷つき斃れた姿なき英霊は、この御羽車に乗って、闇夜を国民の敬虔なる祈りに見送られて靖國のお社へ向かわれたのだ。

薄暗い展示室で、当時のラジオ中継に耳を傾けていると、招魂式の模様が眼前に甦ってくるようで慄然とする。靖國神社の最も大切な部分に触れたような気がした。

当時の方々が「死んだら靖國神社で会おう」と言っていたのは、言葉の上だけのことではないのだ。この招魂式を通して、一柱一柱が本当にここにおられるのだという感覚を実感として持っていたことがよく解った。戦没者は消えてなくなるのではない、神となってこの靖國の宮に生き続け、我々を見守っているのだ。

これは日本人にしか解らない感覚なのかもしれない。以前、黄文雄さん(台湾)が「中韓が歴史教科書や靖國問題について内政干渉がましいことを言ってくるのは、歴史認識の問題以前に、価値観、特に死生観の違いから来ているものだと思う」と言っていたが、私もそうだと思う。

現在、中韓の干渉に屈して靖國神社とは別の国立追悼施設を建設しようという一部政治家の企みがあるが、そう主張する人はまずここを訪れて、我々日本人が死者を祀るのに最も相応しいあり方はいかなるものかについて、真摯に考えてみるべきだと思う。

(鈴木由充)



(注)  この記事は日本青年協議会発行の「祖国と青年」8月号より転載しました。

遊就館のアドレスは以下のとおりです
http://www.yasukuni.jp/yusyu2.html







平成14年9月25日 戦友連404号より


【戦友連】 論文集