国民に対する御要望
孫・・・はい。「日本がこれから受けるであろう苦難は、
通り一遍のことではあるまい。国民達の気持もよく分
かる。然しながら、事ここに至っては、堪え難いのを
堪え、忍び難いのを忍んで、萬世のために太平を開こ
うと思う。
幸いにして国体は何とか護持し得た。これから先は
忠義の心の厚い国民の真心を信頼して、国民と共に歩
む積りだ。もし万一にも、激情の赴くまゝに勝手な行
動をとったり、或いは日本人同志で排斥し合ったりし
て、互いに時局を乱し、そのために大道を誤って、信
義を世界に失うようなことがあれば、それは最も戒む
べきことで、是非愼んでほしい。
どうか挙国一家、子孫相伝え、確く神代より引き継
いだわが国の不滅を信じ、その任の重いこと、道の遠
いことに思いを致し、総力を将来の建設に傾け、道義
を篤くし、志操をかたくし、誓って国体の精華を発揚
し、世界の進運に遅れないように頑張ってほしい。ど
うか私のこの気持を体して、しっかりやってほしい。」
私・・・はい。そこまでだね。ポツダム宣言受諾ときまっ
た時、あくまで戦うべきだとする軍人の一部が、昭和
天皇の吹き込まれた録音盤を取り返そうと策謀したり、
反乱的行動に出たことは、今では知る人も少ないだろ
うが、そういうことを昭和天皇は心配されたのだよ。
しかしそういう反乱的行動もすぐにおさまって、占領
軍がびっくりする位、忽ちにして平穏をとり戻した。
天皇の一声によってこんなにも整然と日本人が行動す
る様を見て、占領軍も天皇を抜きにしては到底占領政
策もうまく行かないことを察したようだね。